「井上、どうしてあんなことを言ったのだ」
「ごめんごめん。だってあのときの朽木さん可愛かったから」
一護と別れた帰り道、ルキアは織姫に尋ねた
すると帰ってきたのは『可愛かったから』
「何をいう、私よりも井上の方可愛いではないか」
「え〜、そんなことないよ。朽木さんのほうが絶対可愛いって」
きゃいきゃい言いながら暗い道を二人は歩く
「どんな会話してんのさ」
突然後ろから言われた言葉に二人はびくっと振り向いた
「たつきちゃん!!」
「有沢さん」
現れたのは織姫の親友で一護の幼馴染・有沢たつき
たつきは眉を寄せて二人を見た
「コンビニに行くだけなのに全然帰ってこないから様子を見にきたんだよ」
そう、今日は織姫の家にたつきとルキアがお邪魔しているのだ
虚の気配を感じたので、彼女をおいて出てきたのだが、やはり時間がかかりすぎてしまったか
ルキアは猫を被って謝罪する
「すみません」
「ごめんね、近くのコンビニに『わさびラムネ』売ってなくて」
下げたビニール袋から出したのは、ラムネ独特の瓶に『わさびラムネ』と書いてあるラベル
「本当はもう一つ種類があるらしいんだけど、これしかなくて」
しゅんとうつむく織姫にたつきはため息をつく
「……分かったから。でも、女二人で暗い中を歩くのは危険だって」
「でも、探しに来た有沢さんも危険じゃ」
「あたしはいいの。大抵の奴なら撃退できる。全国二位舐めんなよ」
握りこぶしを前に出して、反対の手でさりげなく織姫の持つ荷物を取った
「頼もしいな。一護もこれくらいなら心配などしないのだが」
後半は小さく呟く
「それにしても、どっちが可愛いだなんて、あんたら青春満喫してんだね」
思い出したようにたつきが話題をふってきた
「青春って、たつきちゃんは?」
「あたしは部活に青春を満喫してる」
その言葉に織姫は不満そうに眉をよせた
「そんなの女の子の青春じゃない」
「いいんだよ、これで。そう思わない朽木」
「あっ、ええ。いいと思います」
朽木さんまで、と織姫は頬を膨らませる
だが、ルキアにしてみれば『女の子』という年齢はとっくに過ぎていて、現在仕事中の身にしてはうらやましいと思う
織姫の家につくとたつきは彼女の鍵を受け取り、ドアを開ける
二人が中に入ってから最後に入って鍵を閉めた
その対応にルキアは感心すると同時に誰かを思い出しかける
「紳士だな」
「でしょ、でしょ、たつきちゃんは格好良くてすっごい素敵なんだよ」
その言葉に織姫は嬉々として反応した
「織姫」
あきれるたつきにルキアはそうだ、と声をあげた
「有沢さん」
相変わらずの猫を被りたつきを呼ぶが、彼女は怪訝そうな顔をしてルキアを見た
「あのさ、その喋り方、やめない?」
ぴっ、とルキアに人差し指を向ける
「似合う似合わないじゃなくて、織姫と一緒のときと違うって知ってるから」
だから、やめない? とたつきが言った
大きく目を見開くルキア。視線を織姫の方に向けると彼女はニコリと微笑んだ
「……その、すまなかった。ありがとう」
ルキアがそう告げると、たつきは笑った
「うん。意外だけど、朽木らしい。で、さっき何聞こうとしたんだ」
「ああ、有沢「たつきでいいよ」
そう言われたルキアは言葉を直す
「たつきは一護と幼馴染だとか」
「そうだけど? それが」
首を傾げるたつきにルキアは意外なことを告げた
「だからか、たつきのする紳士っぽいところが一護そっくりだ」
「はぁ?」
素っ頓狂な声をだして、たつきは自分の頭に手をやった
「だから、さりげなく荷物を持つところとか、先に部屋に通すところとか、一護もよくやってる」
うーん、と頭をなやますたつきに、ルキアは織姫に同意を求めた
「やらないか?」
「そうかも」
「まぁ、一護は昔おばさんをめちゃめちゃ大事にしてたからなぁ。それが根っこに残ってるんじゃないの」
がしがしと頭を掻くたつきはそう答える
「いいなぁ」
そう答えたのは織姫
「たつきちゃんは黒崎君の昔を知ってるし、朽木さんは黒崎君の家に住んでるし、たくさん黒崎君のこと知ってて羨ましい」
その目は恋する乙女の目で、先ほどから相槌しか打ってこなかったのは、おそらく一護のことを想っていたのだろう
「二人とも名前で呼んでる……って、たつきちゃんズルイ!!」
突然叫んだ織姫に二人は驚く
「どうしたんだ?」
「どうしてたつきちゃんは名前であたしは苗字なの? あたしも名前で呼んで」
ズイッとルキアに詰め寄った織姫
「わっ分かった」
そう答えたルキアに織姫は満足そうに笑う
「本当にいの……織姫は可愛いと思うぞ。一護が落ちぬのが不思議なくらい」
「織姫を一護にやるつもりないから。どうしてもって言うならあたしを倒さないとね」
「それは、一護には荷が重過ぎないか?」
わいわいと騒ぐ女の子の夜は更けていく
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――――――
織姫とルキアとたつきでした
女の子組みが長くなったのは、書くのが楽しかったため
持って帰りたいかたは、切りのいいところでページを変えてもらって構いません
h20/2/21