『黒崎一護、及びその一族全員を極刑に処する』
その言葉に目の前が真っ暗になった気がした
足元から震えが来る
「……そんな!!」
後ろで母が崩折れる気配がする
そして、父がそれを支える気配
けれど、今の俺には何もできず、ただ四十六対の瞳の中ただ、佇むことしかできなかった
それからしばらくして、ようやく声が出た
出た声は掠れて震えていたけれど、それさえ気にしている場合ではなかった
「なん…で、俺が、俺が原因なんだろ! なら俺だけが死ねばいいことじゃねぇかよ!!」
「一護!!」
そう言ったら母の悲鳴のような声
分かっている、解っている
けれど、口からでた言葉はただ加速していくばかり
「何で、一族全員なんだ!! 悪いのは俺で、他には誰も関係ないだろ!!」
自分一人のせいで、一族を失うわけにはいかない
『これは四十六室総意の決定』
『黒崎の一族がまたお前のような出来損ないを出す可能性は否定できない』
「人の息子を出来損ない呼ばわりするんじゃねぇ!!」
父が怒鳴った
『これは昔から定められたこと』
『お主だけ例外扱いするわけにもいかぬ』
母が声も出さずに泣いた
自分の所為だった、自分の為に両親が苦しむのを見たくはなかった
「……なんとか…なりませんか」
うつむいていた顔を上げて、前を見据える
「俺にできることなら何でもやります。だから、頼む、一族を助けてください」
頭を下げる
四十六室の何人かが眉を寄せているだろう
黒崎は誇り高い一族だ
頭を下げるのを見たものは少ない
「一護」
父が呟くように名前を呼んだ
しかし、父が口を挟むことはない
父は今の状況をよく理解している
彼は自分の父親と同時に、黒崎家当主なのだ
息子を犠牲にしても一族を助けなければならない
自分もそれをよく理解している
一縷の望みを懸けて頭を下げ続けた
『黒崎一護』
しばらくして声がかかった
ゆっくりと息を吸い、返事をする
「……はい」
男や女が大勢いる中、ゆっくりと言葉が紡がれる
『お主がそこまで言うのなら、一つの道を示そう』
「それは!!」
『お前がこの世界に尽くすなら』
『命をも厭わないというのならば』
『一族は助けてやろう』
「本当…ですか?」
『条件は四つ、一族は現世へ追放』
『二度と会うことは許さない』
『お前は護廷に入り、死神として暮らし、我々が命じた虚を倒すこと。そして』
『正体を隠すこと』
『暴走すれば、虚として護廷に排除させること、覚えておけ』
そして、沈黙が降りた
後ろを振り返ると両親
母は悲しそうに、目に涙を浮かべて父に支えられてかろうじて立っている
父は母を支えたまま、頷いた
それで決まり
それしか道はないのだ
無意識に震えていた手を握り締めて、前を見る
四十六人の視線がそそがれる
「それで、一族が殺されることがないのならば」
時期当主として育てられた
当主になるはずだった
当主として、一族を護らなければならなかった
ただ、それが少し早く来ただけだ
「そのお話、お受けします」
震えている場合じゃない
俺に一族の未来が懸かっている
強くならなければならない
強くなければ、護れない
震える手では、なにも掴めやしないので
――――――
話の流れは一番古い予定
h20/5/7