白黒一護逆転パラレル2
「テメエ誰だ」
前にも来たことがある縦横無視の白い世界。
その場にいるのは白い髪、青白いと言われるほどの肌を持つ俺と、真っ黒い姿の残月。そして――、
『俺はお前だよ』
この世界に空以外の色があったのか、と思った。
その色はこの世界にはひどく不釣合いで、俺とよく似た顔の男は俺とまったく違う笑顔で笑った。
「意味分かんねえ」
『そうかな? 俺はお前。お前の本能』
小首を傾げるソイツの言うことはさっぱりだ。
「本能?」
『そう。本能。けど、お前のほうが本能みたいだよな』
さっき戦ってるとき、すっごく楽しそうだった、と、そういって楽しそうに笑う。
気にくわねえ。
眉を寄せて思い切り睨んでやったのに、ソイツは意にも介さず笑いつづける。
右手に残月を掲げ……。
「……なんでてめえが残月持ってやがる」
『それはまるで自分のもののように言うんだな』
「俺のじゃねえか」
そういうとソイツは面白そうに哂った。
ゾクリと背中に寒気が走る。
『この力がお前の? まさか本気でそう思ってる?』
その視線に気おされる。
『自分だけの力だと過信すれば、あの男と同じ獣だぞ』
あの男とは先ほどまで戦っていた男のことだろう。
軽蔑したような視線を向けた。先ほどの男に。
同じ視線を向けられることに吐き気がして、視線をソイツの隣にいる漆黒の男に移す。
「俺と来い。残月」
『俺に勝てたらな』
ソイツはそう言って一歩踏み出す。
瞬間辺りには数え切れないほどの刀が出現する。
『欲しけりゃ自分の力で、力ずくで奪うんだな』
「はっ、上等」
俺も手近にあった刀に手を伸ばした。
強い。身体が震える。先ほどまでのような高揚感はまったくない。
あるのはただ、この男を倒さないと、自分がこの世界から出られないということだけ。
負ければ、永遠に出られないのだろう。
金属が合わさる特有の音が辺りに響く。
喧嘩するたびに思う。
別に自分の命は失っても構わない
ただ、格下に負けることは自分のプライドが許さないだけ。
こんなに強い男にならやられてもいいか、とも思う。
『身が入ってねえな。心残りでもあんのか?』
見透かすような視線に射抜かれる。
心残り?そんなもの。と思ったけれど、思い出した。
心残りがあるとすれば、妹。何をしても、何を言っても、傷ついているはずなのに、けして傍を離れなかった妹たち。
母を取り上げた自分が守ってやろうと思った。
今、自分がここで消えたら、妹はどうなるのだろうか。
どくん、と心臓が撥ねた。
崩れてばかりの刀。この世界に広がる無数の刀。一本だけが本物だと言った。
「全部偽者で、全部本物だ!!」
幻想のような虚がはびこる死神の世界も、この真白な世界も。全て偽者のようなのに、本物。
崩れかけた刀が力を取り戻す。
その刀を相手に叩き込めば、光があたりに散って、思わず目を閉じた。
≪忘れるな、私はお前と共にある≫
残月の声で現実世界に戻されたことに気づく。
目の前にいるのは先ほどまで戦っていた男が獣と称した男。
『お前が怖気ついたらすぐに変わってやるよ』
眩いほどの色彩を放つ同じ姿をした男の声が聞こえる。
小手先なだけの力など効かなくて、本気で殺されるかと思った。
それに比べると、この目の前の男はどうだ。
ああ馬鹿らしい、と思わず哂った。
====
オレンジの男は空を見上げる。
先ほどまで曇っていた空は綺麗に晴れている。
きっと一護が全力を出して思い切り戦えたのだろう。
いつもいつも心の底で何かをセーブしている一護。
本当は自分は本能ではないのかもしれない、とそう思う。
自分はもしかしたら理性なのかもしれない。
母を失ったショックは自分に世界を拒絶させ、防衛本能が目覚めた。
理性も優しさも、悲しみに耐えられず、全てを本能にまかせた。
だから本来なら自分があの場所にいたのかもしれない。
けれど母が、家族が大切なのには代わりがなくて。
だから守ろうとする家族が力を出させるきっかけとなった。
あれは彼の心か。それとも……。
否、詮無いことを考えても仕方が無い。
今ここに生きているのは彼で、自分は彼の手助けが出来るだけでいいのだ。
だって自分も彼で、彼も自分なのだから。
―――――――
補足説明。
母を失ったショックで白一護(以下白)は今の性格になりました。
そのときに髪は白くなり、肌も色白になりました。
というか、一護は昔一つで、お母さんが死んだとき、一護と白様に分かれました。
一護が理性、白様が本能。
原作では一護が表ですが、今作では逆。ショックで理性が内なる世界に留まった。
そして、白一護が大切なのは妹(と父親。だが最近父親を本気で抹殺しようか考えている)。理由は自分がいくら傷つけても離れようとしなかったから。
ルキアはどうでも良かったけど、ストレス解消がてら死神の手伝いをしてた。
強面性格悪なんて死神にはたくさんいるから、ルキアはあんまり白が恐くない。たつきと白のような関係(喧嘩友達的な)。
話の筋は本編と一緒で。
で、剣八との戦いで内なる虚と出会う。それが一護。
力関係はもちろん一護が上です。
h20/10/31日記
h21/2/4転記