明日で丁度一ヶ月
月が綺麗な夜だった
星屑[
ゆっくりと進む足は、目的地に近づくたび遅くなっていく
意思に反して?
否、意思どうりに
怖いのか? と問われれば
怖い。と答える
帰るか? と問われれば
帰らない。と答える
反しているのは俺の心
それでも歩みは止まらなかった
部屋の前で歩みを止める
ノックしようとした手が震えている
それでも帰るつもりは毛頭ない
――コンコン
音が無常に響く
中からは何の反応もなかった
それでもそこに立ち尽くす
「……入ります」
しばらくしてそっと襖をあけた
「……」
入るといつもは書類を片付けていた場所に姿はなくて
変わりに窓に腰掛け酒をあおっていた
「もう来ないんじゃなかったのか?」
単々とした言葉
「言った」
静かに返す
「やめたかったから」
「何に?」
空を見ていた視線がようやく自分に向けられる
「中途半端な関係が」
「だから?」
一問一答のような会話
「終わらせてきた」
「何を?」
相変わらず目つきが鋭いまま
「過去を。始めからやり直そうと思った」
「……」
少しの沈黙
それが怖かった
けれど、言わなくちゃいけない
「……好きです」
「誰を?」
「あなたが」
言う後悔より言わない後悔のほうがつらいと知ったから
後悔したから今度こそ始めようと思った
この人とずっと一緒にいれる場所に行きたくなった
だから彼に来ないと言った
彼に愛していたと言って過去と決別した
彼と始めからやりなおすために
「あなたの唯一になれませんか?」
目はそらさない
沈黙が長く感じる
数十秒が、数十分に思えた
動いたのは彼
ため息を一つ
身体がわずかに震える
「吹っ切ったのか」
「……は…い」
声がうわずった
一度目を伏せた彼がもう一度ため息をついて
「来い」
俺の目が見開かれた
「ただし、逃げらんねぇぞ」
紅い瞳が俺を捉える
抜け出せなくなる
「構いません」
それでこの優しい鬼といられるのならば
近づくと手を引かれた
「好きです」
唇が触れる瞬間呟いた言葉
腕に包まれて身体中の力が抜けた
ホッとする
今度は自分から触れるだけのキスをして
「愛させてください」
もう一度口付ける
「阿近さん」
彼が笑った気がした
砕けた星は屑になってしまうがそれでも必死で輝いている
刹那の輝きがとても儚くて美しい
彼との恋は必死で光り続けた証
彼との恋はこれから始まる
好きです、と素直に言えなかったのが敗因だった
終――――――
はい、ようやく終わりました
曖昧な部分が多いですが、許してください
楽しんでもらえたなら本望です
何かあれば、拍手、メール、掲示板などでどうぞ
h20/4/5