『濁り雨』

出会うのは三度目
言葉を交わしたのはたった二回
それなのに思わず聞いてしまったのは何故なのか
「行くのか」
その言葉に答えを躊躇したのは何故だろう
「……ああ」
気になったのは、互いがどこか似ていたからかもしれない





「十代目!!」
笹川京子と二人きりにさせようとして、離れたのがまずかったのか、気づいたときにはあたりは騒然としていた。
俺の隣では山本が煙から顔を庇ってむせていて、いいざまだと思わず思った。
「おい、獄寺これなんだよ!!」
「理解しようとしないお前には関係ねぇよ!!」
辺りには十代目のお姿がない。やばい、探さないと。
「十代目!!」
確かこっちのほうで笹川と一緒に居たはず。
俺が駆け出すと、すぐに山本が隣に並んだ。目をこすっているのは煙にやられたからだろう。
「ツナ、大丈夫か!!」
十代目の姿が見えて、その無事な姿に思わず安堵の息をつく。十代目は知らない少年の傍にいて、敵かと警戒を強めたときだった。
「……っ」
俺の背筋に何かが走った。とっさにあたりに視線をめぐらせる。一応マフィアとして生きている年月は伊達ではない。誰かが近づいてくるのが分かった。メンドくせえ、本物だ。
「ちっ」
僅かに舌打ちをしたのを、リボーンさんに見咎められてしまった。
「落ち着け獄寺。それにしても、なんであいつがここにいるんだ」
リボーンさんも警戒したように、レオンを手に呼び寄せて、十代目の傍にいるガキに視線をやった。リボーンさんの知り合いか。彼が動かないなら、安全だろう。そう思って、近づいてくる気配に備える。
「うおぉい!! なんだぁ、外野がぞろぞろとぉ」
油断していたつもりはなかったけれど、俺の聴覚はその音を聞きとがめた。






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