今朝夢を見た
とても懐かしい夢を
『それを酒癖が悪いというのです』
『絶対見つける』
果たすことの出来なくなった約束を思い出した
『百年では短かすぎるか?』
『じゃあ六十年後』
『またここで』
「しっつれーしまーす。恋次ー」
昼休みが終わる直前に勢いよく扉が開かれる
「松本副隊長、に皆さん。どうかしたんですか?」
いきなり開いた扉にも驚いたが、連れ立ってきたメンバーにも驚いた
副隊長がほとんどそろっていたのである
「松本副隊長なんて、そんな堅っくるしい呼び方しないでよ。乱菊でいいわ」
「はぁ、じゃ乱菊さん何か用でしょうか?」
からからと笑う乱菊に声をかけた
「あのね、乱菊さんが副隊長になったお祝いにお酒飲もうって誘ってくれたの」
答えを出したのは同期である雛森で、それに続けたのは先輩の檜佐木
「ていうか、飲みに行く口実だけどな。もちろんくるだろ」
思いもよらない誘いに恋次は目を瞬かせた
「行くの? 行かないの?」
乱菊にズイっと詰め寄られ、恋次は慌てて答える
「行く! 行きます!!」
「そうこなくっちゃ」
と乱菊は恋次の首に自分の腕を巻きつけた
「乱菊さん!! 絞まってます!!」
イヅルに言われ乱菊は今気づいたように腕をはなした
「あら、ごめんなさい」
そこへガラリと音を立てて室内に入ってきたのは恋次の上司、朽木白哉
白哉は部屋に集まった面々を見渡すと眉をよせた
「朽木隊長、お邪魔してます」
「何か用か?」
乱菊の明るい挨拶を無視して言葉を発する
「恋次の副隊長祝いに呑みに行かないかって言ってたんですけど、朽木隊長も来ませんか?」
にっこり言った乱菊に、皆は心の中で『勇気あるなぁ』と思った
「くだらん」
一刀両断で切り捨てる
「ですよね。しょうがない、うちの隊長と京楽隊長でも誘うか」
がっかりした様子もなく乱菊は次の計画を立てている
「んじゃ、仕事終わった人から『麦飯』に集合ね。一番最初についた人が部屋とっといて」
「あそこって、予約してくんないからなぁ」
人気あるのに、と皆が会話をしている中、白哉が反応した
「『麦飯』?」
そしてなにか考え込む
「朽木隊長?」
乱菊の言葉に帰ろうとしていた面々は立ち止まった
「今日は何月何日だ?」
唐突に聞いたのは今日の日付
「えっ、六月十三日ですけど」
そしてまた何かを考え込む
しばらくすると視線を乱菊へ向けた
「『麦飯』で酒を飲むのか?」
「ええ。そのつもりですけど」
意図が読めずあいまいに返す
「私も行こう」
そう言った白哉に皆は一瞬固まった
が、さすがは副隊長の面々、すぐに我に返った
「本当ですか? じゃ、絶対うちの隊長連れてきますね」
と嬉しそうに言ったのは乱菊
「朽木隊長とお酒のみに行くなんて初めてじゃないっすか」
修平も面白そうに答えた
「じゃあ、また後で合流しましょう」
「ええ、座敷いっぱいなの?」
店の前で乱菊は声を上げた
「すみません」
店員は恐縮して答えた
それもそのはず、いまその場所には副隊長9人と隊長二人いるのだから
ちなみに京楽は、書類が終わっていないからという理由で、伊勢に却下された
「どうする?」
「他のところ行きましょうか」
口々に相談するメンバーを尻目に、白哉が動いた
「店員」
店員に呼びかけた
「一護は来ているか?」
その言葉に店員の顔つきが変わる
「白哉様でございますね。予約を承っております。どうぞこちらへ」
そういうと店員は白哉を案内する
ちらりと他のメンバーをみて一言言った
「来るなら来い」
「で、なんで予約の取れない店で予約してるのよ」
部屋まで行く途中、乱菊が零す
「隊長の権限とかじゃないんすか?」
修平が答えるが、乱菊に反論された
「ここは昔からそんなえこひいきはしない店だから気に入ってるの!!」
「こちらです」
通された部屋は特別製の離れ
白哉は店員が去るのを見送ると、がらりと扉を開ける
「……忘れてると、思ってた」
中の出窓に腰掛けて、月を背にした人物が出迎えた
「兄こそ、忘れていると思っていたが」
白哉の言葉に少年は笑う
「俺は約束守る男だからな」
オレンジの髪に鳶色の瞳の少年はからりと笑った
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――――――
選択小説E
彼との再会
彼らの約束は拍手にて
名前は出てきませんが、ここに繋がってます
番外編としてサイトにアップする時はいろいろと直します
h20/2/26