選択小説H話その後
次の日
「それでは本日の副隊長会議は終わります」
その一言でその場はざわめきに包まれる。
男は男で、女は女で集まってしばしの雑談。
恋次とイヅルは先輩の檜佐木と昨日のことを思い出す。
「先輩、昨日阿近さん送っていったんですよね。どうでした?」
「ああ、部屋連れてって布団直したらバタンキュー。あの人があそこまで酔うのって珍しいんだけど」
「珍しいんですか?」
「珍しいよ」
イヅルの言葉に出された茶をすすりつつ普段の彼を思い浮かべる。
「あの人強いもん。二人で飲みに行くとたいてい俺が先に潰れる」
「それって先輩が弱いだけじゃないっすか?」
「阿散井くん!!」
「なんか言ったか?」
心持ち低い声で脅すように言うと恋次が顔を引きつらせて謝った。
「そろそろ戻りますね」
イヅルが立ち上がると恋次も俺もと続く。
「吉良副隊長、阿散井副隊長、檜佐木副隊長、少しよろしいでしょうか?」
「雀部長副隊長? はい大丈夫ですけど」
呼ばれた恋次たちは顔を見合わせる。
一番隊副隊長に呼び出されるようなことをした覚えはもちろんない。
個人的な付き合いはさらにない。
雀部長に促されて部屋を出ると、そのまま隣の部屋に移動した。
そこにいたのは、
「一護?」
昨日出会ったオレンジ色の死神がそこにいた。
「えっと、その、」
目はあちらこちらに動いている。
雀部長は気を利かせたのか、部屋を出て行った。
「昨日はすみませんでした」
勢いよく下げられた頭。彼はそのまま一気にまくし立てる。
「酒が入ってたうえにあの人との口論は一切遠慮がないからって御三方にまで暴言を吐いてしまって本っっ当に申し訳ありませんでした」
その勢いに思わず押される。
「いや、あの人の遠慮のなさは知ってるし、それよりこっちも昨日の話の内容聞いちまったし。顔上げろよ」
なあ、と修兵が後輩二人に尋ねれば、二人ともうなづく。
「あれだけ白熱した口論だったけど、結構深いところ突っ込んでたし」
「うん」
「ああ、あれは半分本当で半分嘘です」
顔を上げた一護は首を傾げた副隊長陣に答えた。
「確かに長生きはしてますけどね」
笑った顔が困ったように感じるのは気のせいだろうか?
「他の隊長方に面識あるからっていって溜口で話すと、やっぱりどこかしら反感買うんで上司は敬語っていうのは信条です。一番隊でこの見た目だとよけいだから」
「苦労してるんだね」
「苦労っていうか処世術って奴ですよ。まあ阿近は出会ったときから地位とかあんまり変わってないし、だからずっと遠慮なしで……」
まああいつに敬語使った日にゃ実験室行き確定なんですけどね、と笑う彼につられてこちらも笑った。
「確かにあの人ならそうする」
少し同情しつつ修兵は一護の肩を叩く。
「まあまた今度一緒に呑もうぜ」
その言葉に恋次とイヅルもうなづく。
「ありがとうございます」
笑った顔はうれしそうででもやっぱりどこか悲しそうだった
――――――
選択式H話その後でした。
ここまで書こうとして、あまりにも長くなりすぎたのでカット。
番外編として書きました。
本編が考えてたのとズレてしまってたので、噛み合わなくなって大変でした。下はちょっちおまけです。
ふと思い出した恋次が一護に言う。
「十一番隊なら他隊の隊長に溜口なんざ日常茶飯事だけど」
「冗談はやめてください。あんな下衆と一緒なんて吐き気がする」
その笑顔にその話題は二度と振らないと硬く心に誓った恋次だった。
h20/6/26