宴会での再会

六番隊に新たな副隊長が就任した祝いに、各隊長、副隊長で宴会が開かれた
といっても来ない者も中にはいたが
「ふんふ〜ん。やっぱみんなで飲むお酒はおいしいねぇ」
上機嫌な京楽は追加の酒を頼んだ帰り、見覚えのある後姿を見つける
「一護ちゃん?」
その言葉に前を行く青年が振り返った
少年と青年の間くらいの彼は振り返ったかと思うと、眉間にしわを刻んでそのまま歩き出す
「えっ、ちょっと待ってよ一護ちゃん!!」
慌てて腕をつかむと一護はしわをさらに深くし唸った
「その言い方やめろ」
「やぁ、久しぶりだね」
「無視か」
声が低くなるのも気にせず京楽はたずねる
「今日は一人?」
「……」
「連行決定」
無言は肯定。つかんでた腕を引き自分たちがいる部屋へと連れて行く
「ちょっと待て、お前他の隊長たちと来てんだろ、面識ないのにやめてくれ」
げっ、という顔をして抵抗するが京楽はかまわずに引っ張る
「まぁまぁ、浮竹もいるからさ」
「十四郎も!? 余計にやめてくれ!!」
「なんでそんなに嫌がるかなぁ? 普段はそんなことないのに」
「酔ったあいつは普段に輪をかけて構ってくるんだよ」
一護の必死の抵抗もむなしく彼らの部屋につれてこられた
「京楽、遅かったじゃない……」
がらっ、とふすまを開けると浮竹が声をかけようとして、連れてこられた一護を見るや否や目を瞬かせた
「一護じゃないか!!」
その声に抵抗をあきらめたのか、一護が答える
「よう十四郎、久しぶり」
そしてくるりと後ろを向くと
「じゃ、俺はこれで」
最後の抵抗とばかりに逃げ出そうとしたが、奥からの一言で固まる
「儂に挨拶はなしか」
「……重」
顔だけを動かして声の主を見る
座敷の一番奥に座っているのは、護廷を束ねる総隊長・山本元柳斎重國その人
その隙に浮竹と京楽が両腕を捕らえた
嘆くような、わめくようなそんな声を二人の間であげる
「なんでお前までいるんだよ、年よりは年寄りらしく早寝早起きしてろ!!」
「ほっ、たまには羽目を外すのも大事じゃて」
「それ普段から外しまくってるこの二人はどうなんだ?」
両側にいる二人を軽くにらみ、一護はもう降参というように手を上げた
それを見てようやく二人は手を離す
「ったく、まぁしょうがないか。じゃ、改めて。久しぶりだな重」
「何年ぶりじゃ」
「んと、春水と十四朗が隊長になったころ以来じゃね」
「二百年はすぎとるの。相変わらず健在とは思わんかった」
「それ、こっちの台詞」
にっ、と笑って一護はあたりを見回した
「にしても、白哉も烈も結構落ち着いてきたか」
「ご謙遜を。一護さんこそ相変わらずお元気そうで何よりです」
「相変わらず過ぎて呆れるが」 慈悲の微笑を浮かべた卯ノ花と、いつもと同じように無表情に答える白哉
「ほっとけっての。で、そこの同期三人組はなんでそんなに呆けた顔してんだ?」
視線の先には今回六番隊副隊長に就任した、阿散井恋次
三番隊副隊長の吉良イヅル
五番隊副隊長の雛森桃
一護の言葉通り呆気にとられた顔をしていた
「ちょ、ちょおぉぉっと待て一護」
恋次が引きつりながら声を上げる
「そういや恋次、副隊長になったのか、おめでとう」
「あっ、ああサンキュってそうじゃねぇ!!」
「そうだよ、なんで一護君、隊長達と知り合いなの?」
「それよりどれだけここにいるんだい?」
上から順に一護、恋次、雛森、吉良
京楽と浮竹の間に腰を下ろした一護はあっけらかんと笑った
「こいつらだけじゃないぜ」
「確かに、上位席官と知り合いが多いって言ってたけど」
「ああ、ここじゃ会ったことない奴の方が少ねぇ。それ以外じゃあげるのも面倒だな。ってことで、そっちの隊長さんらとは初めましてだよな」
顔を向けたのは三、五、九、十の隊長達
「一つのものを護ると書いて、一護。どっかの誰かみてぇに苺読みしたらぶっ飛ばす」
笑顔で拳を握り締めながら京楽に視線をむける
「あはは、一護ちゃん相変わらず酷いよ」
「自業自得だ」
「君は顔が広いんだね。僕は五番隊隊長藍染惣介だ。よろしく」
「よろしく」
それをきっかけに初対面の面々が自己紹介をしていく
その後酒が一護にも回され宴が再開された
「あたしらだけだったらともかく、京楽隊長達とも知り合いって一体いくつよ。うらやましいわね」
周りの酒瓶を増やしながら乱菊は酒をあおる
「そうそう、僕らに初めて会った時からその見た目だったよね」
「先生が会ったときはどうだったんですか?」
京楽と浮竹も興味深そうに尋ねてくる
「儂と会ったときのう」
「年だし忘れてるんじゃねぇの」
嫌味な笑顔がとんできた
「誰が忘れてとるか!! …確か霊術院を設立したころじゃったか」
「ああ、そんなころか」
さらっ、と言われた言葉に皆が固まった
「一体お前の体はどうなってるんだ」
「何だよいきなり、別に普通だろ?」
「いいかい、一護ちゃん。真央霊術院が設立されたのは二千年前だよ」
「確かに、死神ならともかく霊圧がない者が二千年も転生せずにいるのは珍しいですね」
「藍染隊長もそう思うだろう? それなのに、どうして年もとらずに」
「重だって昔と同じでじじいのままだぜ」
「……一護」
年長の二人の質問をするりとかわして彼は立ち上がる
「悪りぃ、今回はこれで」
「今来たばっかりじゃないか」
「今日は元々予定があって来てんだよ」
だからまた今度
そう言う彼に皆は名残惜しそうに見送った
「面白い少年だったね」
「ホンマですわ。イヅルも紹介してくれてもええのに」
三番隊と五番隊の隊長が笑う
「紹介と言われても、彼は会うことがかなり稀ですから、無理ですよ。でも日番谷隊長も初対面だったのは以外でしたね」
てっきり雛森君経由で会ってるのかと、という吉良の言葉に雛森は口を尖らせる
「日番谷隊長に会わせる前に、藍染隊長を先に会わせてます」
それに日番谷は渋い顔をするが、雛森はそれに気づかない
乱菊はそれを見て面白そうに目を細めた
「相変わらずじゃったのぅ」
そう呟いた重國の言葉は再びざわついた部屋で、聞こえることはなかった





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選択小説J
h20/5/23