「あれ、めずらしい修兵じゃん」
仕事を早々に終わらせて、ずっと避けていた霊圧の持ち主のところへ歩み寄った
「……少し、いいですか?」
「どうかしたか?」
うつむいている俺に心配そうに話しかけてくる
「話が、あるんです」

優しい人よ、俺に勇気をください



星屑Z



「で、話って?」
仕事の時間はとうに過ぎていて、あたりに人影はない
それでも念のためいつも人が少ない場所まで移動すると、彼が口火を切った
「……」
口を開くが言葉が出てこない
「修兵?」
「どうして」
名前を呼ばれた途端に声が滑り出た
「どうして前みたいに『修』って呼ばないんですか?」
言いたかったこととは違うこと
けれども知りたかったこと
彼は意外そうに目を見開いた
「それは、」
「ただのあだ名だったら改める必要なんてないじゃないですか」
彼の眉間にしわが刻まれた
「奥さんに遠慮してるんですか?」
「何年前のことだよ」
彼から出たのはそんな言葉
その言葉を聴いた瞬間彼の顔が歪んだ
否、見えなくなった
「…だって、俺…おれは!!」
言いたくて言いたくてけれども一度も言わなかったコトバ
「あんたが…本当に…好きだったんだ!!」
「しゅ」
「あんたが俺を『修』って呼んでくれて、誰よりもあんたの近くにいたと思ってた!! でもあんたは別れさえ言わずに終わりを告げたんだ!!」
一気に捲くし立てる
「確かに会ってなかったさ。でも、でもならなんで呼び方まで変えたんだ!?」
それさえ変わらなかったらあきらめられたかもしれない
「呼び方を変えたって事は少なくとも意味があったはずだろう!? 俺は…とく…べ…つだって…思っ…て」
嗚咽に邪魔されて言葉にならなかった
「……しゅうへ、……修」
しゃがみこんだ俺に言葉がかかる
「ごめんな」
手が頬に添えられた
そんな言葉が聞きたかったわけじゃなかったけれど、涙は止まらない
「なかったことにしたほうが良いと思った。俺じゃなくてお前のために」
手が涙をぬぐう
「この間あったときまさかと思った」
まだ想っていてくれたのか、と
嬉しくもあり同時に後悔した
「お前に苦しい思いをさせちまったんだな」
優しく髪を撫でられる
「逃げたのは俺だ」
だからごめん
そう言われてようやく全身から力が抜けた
「……好きだったんだ」
「知ってる。俺も好きだった」
「それは欲しかった好きじゃなかった」
「……」
「終わろうとして、終われなかった」
「俺が終わらせてやるべきだったんだ」
「だから、終わろうと思った」
「ごめ「愛してました」
「修」
最後にささやくように言葉を紡ぐ
「さようなら」
愛しい人よ
「海燕さん」
俺はやっと前に進みます



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――――――
ということで泣き崩れたVer.でした
流れで書いたらこういうふうになって、もったいなかったので載せてみた
h20/4/4