「結婚するんだ」
最愛の彼からそう言われて返した言葉は
「オメデトウ」
――馬鹿野郎
呟いたそれは彼に向けた言葉か、それとも己に向けた言葉か



星屑



十三番隊の副隊長が、三席と結婚すると言う噂は、たった一日で全隊に伝わった
俺がそれを聞いたのは、書類を十三番隊に持っていった時
本人からだったのは幸いだったのかもしれない
「修!!」
いつも通りの変わらない呼び方に、いつも通りに振り返る
聞いてくれ、と肩に両手を置き嬉しそうに微笑む彼はとても幸せそうで、何だかこっちも嬉しくなった
「どうしたんだよ。何か良いことでもあったのか?」
ただの席官が副隊長にため口を聞くことは出来ないが、親しい間柄では特に問題視されていない
「おう、分かるか? 実はな」
そして伝えられた冒頭の言葉
一瞬にして頭が白くなった
何を言っているのか分からずに、うわずった声でもう一度と尋ねても、帰ってきた言葉は同じ
頭の思考がついていかず、それでも祝いの言葉が口からでたのは奇跡だったろう
上手く言えなかったはずなのに、彼が違和感さえも覚えないのは、それほど気分が高揚していたからかも知れない
「ありがとな」
心のそこから幸せそうな彼に、俺の心は地獄に落ちた


「何やってんだ?」
彼が去って、しばらく突っ立ってたら唐突に声をかけられて驚く
振り向くと、鬼が立っていた
「別に、何も」
そういうと鬼は不満そうにない眉をよせる
「ただ、考え事してただけだから」
足早に去ったが、視線が背中に突き刺さり、角を曲がってもその感触は消えなかった


「おめでとう」
「おめでとうございます」
各隊の上位席官から同じ隊の隊員、他にも親しい隊員たちが招かれた式は厳かに進み、そして終わった
たくさんの祝いの言葉を伝えられて、それに返す夫婦となった二人
俺はそれを直視出来ずに少し離れたところから見ていた
俺は九番隊の席官で、彼とも親しかったから式には招待されていた
それも、お披露目の時だけじゃなくて、最初から
つまりこの世に存在するかも分からない神に誓うところからだ
けれど、本音は行きたくなかった
誰が好き好んで好いた相手の式に顔をだす?
冗談じゃなかった
しかし、行かなければ不信がられる
仮にも副隊長の婚姻式だ
仕事が忙しいからといって断れるものではない
「修兵!! そんなところにいたのか」
彼が俺に気づいて近づいてきた
人が大勢いるなかで、気づいてくれるだけで体が熱くなる
どこにいても気づいてくれる、それがたまらなく嬉しかった、
……今までは
気づいてほしくなかった
隣に何よりも大切なヒトがいるのに、笑いかけないでくれ
気づきたくなかった
名前の呼び方が変わったことに
あんたが他のヒトのものになったってことに



next ――――――
某サイト様の海修を読んで考え付いた作品
本来ならもっと短くなる予定だったんですけど、文才がないので長く…
続きます〜
h20/3/07