オフ用なので若干読みにくいかも
『貴方に心からの忠誠を』
「ボンゴレのドンを殺して来い」
この世界に入ってどれだけ時間がたったのか分からなくなった。下っ端で終わるつもりもなく、上へ上へと上る。誰かとつるむつもりもなく、一人で着々と確実に幹部へと近づく。時期幹部と噂されるようになるのも近い。
だが、何かが物たりねえ。
そんなときボスに呼び出され告げられたのが先の言葉。ボンゴレといえば最近代替わりしたファミリーだ。新人のドンは一番暗殺の的になりやすい。それは警備が固められているということ。難しい仕事だ。けれどこれをこなせば幹部は確実。それよりも困難な仕事は久々だ。
――面白い
それに感が何かを鳴らした。それを信用しているから悩む必要もない
「了解した」
さあ、楽しいことだと期待しよう。
――――
ボンゴレはここ数代穏健派として名高い。おかげでまったく興味がないファミリーであった。ドンが変わったのも仕事の都合上で知っていて当たり前のこと。世間一般程度しか知らないわけだから調べることは山ほどある。面倒だが部下など使わない。誰かとつるむようなことはしない。この世界すべてを疑う。それは常識で、それは俺も同じ。同じファミリーだろうが上司だろうが、信用も信頼もしていない。ボスだってそうだ。ただ自分が満足できるか否か、ただそれだけに重点を置く。それが俺のアイデンティティー。人間誰でも独りだ。
「うわっ!! す、すみません」
調べたことを整理しながら通りをあるいていたら、いきなり後ろから何かがぶつかった。
「ああ? 何だてめえ」
振り向いたら俺よりも一回り、いや三回りくらい小さいガキが痛そうに額を押さえていた。ああ、そういえばガキがぶつかったその辺に、ナイフを隠し持っていたか。
「す、すみません」
声に威圧されたのか、ガキはこちらを見る暇もなく頭を下げる。まあ顔を上げていたとしてもすぐに頭を下げる羽目になっただろうから懸命な判断だ。
「フン」
そのまま去ろうとすると「あのっ」と服の端を引っ張られた。イラッときて先ほどよりも低い声が出る。
「何だ、まだ何か用か?」
声と顔に気おされてガキは振るえて握っていた裾を離す。茶色い髪に琥珀の瞳、幼い顔立ち。瞳の中の光は揺れている。怯えているのか? やはりガキだ。それでもガキは何か意を決したように口を閉じて開いた。
「あそこ」
指を指すほうを見ると低い塀の上、何かが鳴いていた。よく見ると雛鳥だ。それも生まれたばかりの。そのまま視線を上げると木の上に小さな巣。むき出しの枝にむきだしの巣。木には葉がない。それもそうだ夏はとうに終わっている。鳥が気まぐれで産んだのか、そういう鳥なのか、興味の興の字も出てこない部類だ。ただ一つ分かるのはあのままだとあの雛鳥は猫にでも喰われてしまいだろう。で、なんでこのガキはそれを俺に教える?
するとガキは思っても見なかったことを言いやがった。
「巣に返してあげてくれませんか?」
「はぁ?」
思わずそんな言葉が口をついて出る。それもそうだろう、どこの誰が俺に物を頼む。
「何で俺が」
「だって、あなた俺より背が高いし、それに今回りに誰もいないし」
当たり前だ。ここは裏通り。表とは違い物騒な人間ごろごろいる。ここで襲われても文句は言えないような場所だ。そんなことも知らないのかガキが。
「放って置けばいいだろうが」
面倒だ。面倒なら相手をしなければいいのだろうが、なんだかそんな気が起きなかったから相手をしている。
「えっ、だってそれじゃあ死んじゃう」
でかい目をさらに大きくさせて驚くガキ。可哀想だ、とつぶやくガキ。裏の社会を知らないガキ。裏なんてないそんな世界で育てられたのだろう。そこで関わらずに帰ればよかった。けれどなんとなく、ほんの気まぐれに付き合ってやろうとふと思った。おそらくその目には負の感情は一切なかったからだ。裏の世界にはそんな人間はいない。珍しいものをみた駄賃代わりくらいにはなる。
塀は俺の肩くらいで、確かにガキじゃ塀に登れもしないだろう。ひょいと乗って立つと手を伸ばしたくらいに巣に触れる。拾った雛を乗せてやるとガキはほっと顔をほころばせた。
「ありがとうございます」
「二度としねえ」
ヒラリと飛び降りつぶやくとその場を後にした。未練なんてないから振り返りもせずに。
そういえば身なりはそこそこいいものを着ていた。貴族の人間か? 護衛もつけずに出歩くなんざどこのボンボンだ。違うとしてもそれに精通する人間だろう。だが、大体どうしてあのガキは俺にぶつかってきたのだ? あの道は一本道で横道から飛び出したわけでもない。蹴躓いたのか? あの間抜けそうなガキならやりかねん。
と、そこで重要なことに気がつく。
――ガキの気配に気づかなかった
常にあたりに気を配っている。それはもう空気を吸うのと同じくらいに自然な行動だ。たとえ緩んでいたとしても、自分に近づくものの気配くらいは瞬間的に感じ取れる。その事実に愕然として振り返ったが、ガキの姿はもとより誰の姿もなかった。
「貴方に心からの忠誠を」と「たった一人の貴方のために」という二つの話。
前半はこんな感じ。後半はCPないです。ツナ様格好いいー!!を目標に書いてます。
後半はこんな