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一護の視界を三人が走っていく。
その一人に一護は視線をとめた。
その少女は視線に気づいたかのようにこちらを振り返る。
視線が絡み合う刹那、三人の動きが止まった。
あたりに人影はない。
この霊圧に耐えられる人間はほとんどいないだろう。
だから、気づいた多くの死神がこの近辺から去った。
十一番隊隊長。更木剣八。
その男は屍の上を歩いていく。



「ふん、女か。まぁいい。強いのに変わりはねえ」
目を付けられた女は、他二名を先に逃がそうとする。
自分が戦うつもりなのだろう。
――一体誰に似たんだか。
嘆息をつき、剣八が両手を広げたのを見て、一護は動いた。
「好きなところを切りつけて来い」
その言葉に、どれだけの死神が死んだことか。
言葉に乗せられ、女が動く。一護は瞬き一瞬で間に入った。
「ちょい待ち」
「……てめえ誰だ」
「いっちー?」
剣八の後ろでやちるが首を傾げた。
「アンタ、誰?」
「一番隊隊員、一護」
「やちるが言ってた奴か。どけ」
言葉の応酬に一護は笑う。
「どかねえよ。夏梨!!」
鋭い呼び名に少女、夏梨は視線を一護に向けた。
「俺は、お前の見方だ。ここは任せて。行け」
視線を合わせることはしない。
その一瞬で剣八にやられる。
「一番隊つっても、平隊員だろ。俺に」
「敵うわけねえって? はっ、お前の殺気のおかげで、辺り一面人っ子一人居ない。なら、本気だしてもバレねえよ」
その言葉に剣八は哂う。
面白い玩具を見つけたように。
「やちる」
その言葉にやちるは目を瞬いた。いつも草鹿副隊長と他人行儀な呼び方の男が、呼び捨てた。
「お前、前に言ったな『いっちー強いでしょ』って」
「うん」
「強いかどうか、自分で見極めてみればいい。夏梨、早く行け」
強い言葉に夏梨はその場から駆け出す。
「さて、お相手しましょうか。更木剣八隊長」
皮肉げな笑顔で一護は挑発した。






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選択式M h21/6/1
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