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『隊長各位に通達! 只今より緊急隊首会を招集!!』
その緊急指令が瀞霊廷を駆け巡ったとき、一護は騒然とした室を抜け出した。
本来一護にかかれば目立つ橙の髪をもってしても存在を消すことは可能。
忙しそうに駆け回る死神の脇を抜けていった。
「どうじゃい、なんぞ弁明でもあるかの」
進入した旅禍を取り逃がした市丸への弁明の場として設けられた隊首会で、山本は一喝する。
一気に緊張感に包まれた場に、一護はこっそり笑う。
一護は声が聞こえるほど近くに居るのに、誰も気づかない。
おそらく山本でさえ気づいていないだろう。
一護の力は彼さえも超越するのだから。
一度も一護に会ったことのない山本に、一護の存在を理解できるはずがない。
山本だけでなく、知り合いである白哉にさえも一護はその力をみせたことはなかった。
誰も仲のいい死神がいなかった白哉を無理やり連れまわしただけ。
耳を済ませて声を聞く。
あの日から一護は隊首会には常に張り付いていた。
存在を消すことは簡単だった。
一応最善の注意は払っている。
隊長たちが交わす会話に意味があった。
誰がどう思っているのか、本音ではないだろうが、それが重要だった。
「ありません」
市丸のいっそ潔い答えに室内はざわめく。
「…ちょっと待て…市丸」
藍染が何かをいいかけ、一護がその内容に意識を向けた。
――ガアン
『緊急警報!! 緊急警報!! 瀞霊廷に侵入者あり!!』
警報が鳴り響き、一つの霊圧が一護のいる入り口に向かってきた。
「この霊圧は更木か」
今、ここで見つかるわけには行かない。もう一つ、小さな霊圧が近づいてくるのが分かった。
おそらく彼の副官だろう。
一護は僅かにあった影に入り込む。
意識をどこかへ飛ばしている剣八に気づかれることはなかったが、そのままじっとしているわけにもいかない。
他の隊長たちが己の配置に付こうと動き出したからだ。
「ちっ」
これ以上ここにいるのはまずい。
他の面々がまだ室内にいるうちに、と一護はその場を離れた。
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選択N
『一度も一護に会ったことのない』というのは本性を見せたことがないということです。
h21/6/1
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