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「卯の花隊長はなんて仰いました?」
電子零機を返すとき、彼が聞いた。
「今から来るそうです。あの、いろいろありがとうございました」
「いいえ、ああいう連中は痛い目見ないと分かりませんし、なにより一度許してしまうと調子に乗って、他にも迷惑をかけてしまいますから」
一護は人当たりがいいように笑う。
「そうですよね。でも僕はいつも舐められてしまって、あなたのように強ければいいと思います」
「七席はお強いと思いますよ」
「えっ、僕なんて全然です」
慌てて手を振る花太郎に、一護は首を振る。
「四番隊の席官のなかでも、十一番隊に真っ向から向かっていく人はあまりいません。七席は彼らときちんと向き合った。それは、とてもいいことだと思います」
正面から言われて、花太郎は真っ赤になる。
「あ、ありがとうございます」
「山田七席、お疲れ様です」
上位席官や平隊員を引き連れた四番隊隊長・卯ノ花烈はすぐにきた。
穏やかな声はその場のざわめきさえ、静まらせる。
「隊長直々に、すみません」
「いえ、元はといえば配慮が足りなかった私の責任。彼らには全員部屋に戻ってもらいます」
花太郎は烈に頭を下げ、烈は柔らかな笑顔をいっそう深くした。
烈はそのまま一護に向き直る。
「それよりも、やはり協力してくださったのは、一護さんでしたか」
「卯の花隊長お知り合いで?」
聞いてきたのは副隊長の虎徹勇音で、一護がそちらを見やると、一瞬ビクついた。
「勇音、怯えることはありませんよ。彼は一番隊の隊員で、とても礼儀正しい方ですから。ですが、今回は無茶をしましたね」
そう言って一護の右手首を掴む。ほんのわずかに眉を寄せただけなのだが、彼女には見透かされているのだろう。
「自然治癒でお願いします」
苦虫を噛み潰したような顔の一護は不貞腐れたように呟いた。
卯の花は笑い他隊員に救急箱を開けるように指示を出す。
「さっきので痛めたのですか!?」
慌てた花太郎だが、一護は首を振る。
「別に心配することはありませんよ。喧嘩、というより素手で殴るのが久しぶりでしたから」
「昔はやられていたので?」
右手首を治療していた烈はくすりと笑う。
「護廷に入る前の話です。それより、始末書はどうしますか?」
隊同士の意味のない諍いはご法度で、場合によっては謹慎の処分もありえる。
「なんとお書きになられるつもりですか?」
「もちろん、『他隊の上官に平隊員が侮辱し、殴りかかろうとしたので助けました』と。大体、平隊員の時点で容赦するつもりはありませんでしたから」
にこりと笑う一護。それに烈も笑う。
「変わられませんね」
「変わりませんよ。そうそう、店の修理代ですが」
「もちろん、四番隊と十一番隊から出させていただきます」
店の中は結構なものが壊れていて、明日再開できるのかどうかといったものだ。
それに一護はいたずらっ子のような顔をした。
それに烈はコロコロと笑う。
「いえ、さっきの男たちの財布から出しときました。たまにツケといって払わずにかえりますから、ちょうどいいと店主も仰っていました。ので、十一番隊はおろか四番隊も出す必要はないそうです」
「相変わらず手が早いですこと」
「あなたがこられた早さには適いませんよ」
「一護さんの電子零機から連絡が来ましたので、これは一刻も早く行かないと、と思ったにすぎません」
あなたはすぐに逃げてしまいますからゆっくりとお話することもできません、とつぶやいた言葉に一護は苦笑する。
「隊長と平隊員です」
「けれど、私たち古株にとっては昔を話すことの出来る貴重な人材です」
じっと一護を見つめていた烈に負けたのか、彼はあきらめたようにため息をついた。
「……わかりました。今度時間が空き次第呑みに行きましょう」
その言葉に烈は笑った。
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h21/6/1
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